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25歳、全力で台上前転

台上前転をしたい年頃になってきました

マザコンなのか?

おれの会社は12時になると昼休みだ。

飯を食ったり、タバコを吸ったりの時間をめいめいに楽しむ。


そんな時、おれが何をしているか。

けっこう、母親に電話することが多い。


世間的には非常に「マザコン」な行為かもしれない。人に言うと引かれるだろうとおれもわかっているので、こんな話を人にしたことはない。ただ、気がつくと電話をかけてしまっている。特に話題があるわけでもないのに、だ。


離れて暮らしているというのも理由としてはある。といっても、まだ親父も元気だし、なんだったら高速バスに飛び乗れば帰れる距離だ。そこまで離れてもいない。ただ、どうしても心配になる時がある。

この前電話した時、母は電話に出なかった。それだけのことで、仕事がけっこうな勢いで手につかなかった自分に、我ながら驚いた。昔はあれだけ一人暮らしがしたいと思っていたのに、家族と離れて、一人で暮らしたかったのに、だ。


25歳になって、おれの中で何が変わったのだろうか。


突然話は変わるが、おれは生まれてこの方、彼女というものがいたことがない。

モテないというのもあるが、どうやらおれは世間一般の男と比べて「誰かと一緒にいたい」「彼女が欲しい」といった感情が薄いようだ。

12月になると「また一人のクリスマスやで〜 」などと言ってはみるものの、内心特に寂しがってもいない。街中でカップルを見かけても、敵意を感じたりだとか寂しくなったりだとか、そういう感情が湧いてこない。ただただ「無」である。


一回、悪友に風俗に連れて行かれたことはある。確かに自分の前で裸になっている女の子がいることに興奮はした。しかし、狂宴が終わった後の財布の中身の減り具合や、その時の感情を逐一計算してみて「特に面白くもない」という結論に至ってしまった。

それ以来、そういった類の店に行ったことはない。最近は女性と話をした記憶すら曖昧だ。


しかし、自分の歳を考えるにつれ「このままではいけないのではないだろうか」という考えが頭をよぎる。

幸い、おれの周囲の人間はろくでなしが多いので、結婚しているのは片手にも満たない。しかし、問題はおれだ。一足飛びに結婚してみたりした方がいいのか、とも考えるが、相手に申し訳ない。リアル「逃げ恥」は、まだまだ世間に浸透してないだろう。


おれは、一人でいることが苦にならないタイプの人間なのだと思っていた。だからこそ、休みの日に図書館で本を読んでいたりすることが多いし、女の子に「飲みに行かない? 今日暇なんだよね!」みたいなことを言ったこともないのだと思っていた。ずっと、そうやって生きていくのだと、ついこの前まで思っていた。



昼休み、母親に電話する。そうすると、大体はいつもと変わらない声で、母は電話口でおれの体調を心配する。残業がかなり多い会社だし、特にやる気の出る業種でもないので、近々転職したいとおれが思っていることを、母も知っている。この前受けた会社はどうだった、と母がおれに問う。ダメだった、また一からやり直しかな、と、おれは少しばかり落ち込みながら、母の声を聞いている。焦って決めちゃダメよ、世の中には会社なんてたくさんあるんだから、お父さんも転職する時は色々あったのよ、そういえばねえ…


おれは、母の声を半分上の空で聴きながら、リラックスできている瞬間に気づく。誰かの声を聞いているだけで、心地いい。天にも昇る心地、なんて感じではないが、世界におれと母しかいなくなったみたいな、そんな心地よさだ。


おれは母に電話をかける前、確かに「寂しい」と思っている。何かが不安で、人と話したくて仕方がなくなる。25歳になって、大人もどきになるってことは、こういう気持ちを持つようになることなのか?


早く少しでも興味の出る仕事に就いて、結婚でもしたいもんだ。

あ、これは寂しいからとかじゃなく。